Track byユキニフル
水がぶつかる音。 いつのまにか、膝まで濡れている。 水深が深くなっている。 このままでは進めない。 辺りを見回す。 小さなボートがあった。 頼りなげに、 さざ波に揺られている。 水中を覗き込んでみると、 同じ形のボートがいくつも 沈んでいる。 かろうじて浮かんでいるこの舟は、 生き残りなんだ。 わたしと同じ──。 水をかき出して、座ってみる。 思った以上に安定している。 オールも残っていた。 ゆっくりと漕ぎ始め、 向こう岸を目指すことにした。