少しだけ雨は弱まり、 わずかに開けた視界。 きっと通信も開く。 「こちら、ミゾハ」 応答を待つ。 代わりに短く鳴る電子音。 音楽と呼ぶには取るに足らない、 通話を待つ間にだけ流れる音。 「こちら、ノラエ。 ミゾハ、元気そうで良かった。 聞こえるかい」 「うん、大丈夫」 わたしの世界に、 温かい音が加わった。 「探しものは見つかった?」 「いいや、まったく。 ミゾハはどう?」 「どう、かな……。 あと、 もう少しだって気もするんだけど」 「そっか。 でもたぶん、ぼくは、 君よりは先に見つけられるよ」 「どうして?」 「ぼくは先に旅に出ているから」 「なぜ、それが理由になるの?」 「さあ、なんでだろうね」 ノラエは笑う。 捜索隊のなかでたったひとりの 友達。 ノラエは世界に残された物語を 心から探し求めている。 「ぼくの旅が終わったら、 教えてあげるよ」 ノラエが言う。 わたしは言葉に詰まって、 何も返せなかった。 「それじゃあ、 ぼくは地下に潜るから…… 通信はまたあとで」 途絶えるノラエの声。