焚き火に枯れ枝をくべる。 服は木に吊るした。 水に浸かって濡れた服はまだ 乾かない。 垂れる水滴を眺めながら、 携帯食料を少しだけ炙ってから 口にする。 味が良くなるわけじゃない。 ただ、体を温めたかった。 乗ったことのないボートで川を 渡ろうとしたのは間違いだった。 岸まで近づいたとき、 返す波に飲まれて 転覆してしまった。 どうにか落ち着けるところまで 歩いてきて、身体を休めている。 ザックから通信機を取り出す。 壊れてないといいけれど。 ノラエに発信する。 発信音は鳴った。 ノラエは応答しない。 捜索隊に入って間もないころ、 ノラエがわたしにくれた通信機。 発信中の音色を 口ずさもうとしてみる。 うまく歌えないけど、気が紛れる。