「目覚めたのは、 白雨の降りしきる小高い丘。 辺りに人影はなく、 ただ唇に暖かな温もりだけが 残されていて。 僕はどうしてここにいるのだろう。 やっと会えたのに、 一緒に帰ろうって 伝えることもできず。 ここで何があったのだろう。 シスは、別れ際に 耳元で何事か囁いていた。 けれどそれがどうしても、 思い出せなくて――――」 初めて出会った その瞬間から 思いは決まっていたのかな? 幸せって言葉の象徴は 疑う余地なく、君の存在だった 色んなことが変わってしまって 二人離れてしまったけれど まだ変わらないモノも 確かにあるはずだから 出会わなければなんて 後悔した夜もあった 蒼白の空は遠すぎて いつまでも届かない気がして 忘れられたらなんて 思い悩むときもあった けれど奥底に包まれた 想いに嘘はつけない... 濡れているのは瞳だけじゃなくて 小粒の白雨は全て洗い落とすように いつからだろう 振り続けていた <♪> 「二人の思い出を消し去ろう。 あたしという存在に 囚われることなどなく、 全て忘れて幸せに 生きられるように。 二人はここで別れ、 もう二度と出会うことはない」 「囁かれたのは、 そんな悲しい魔法。 魔女と下僕は倒れ伏す少年を置き、 静かにその場を後にした」 ぼやけた思考は痛み残し 鮮明に切り開かれた 蒼ざめた魔女の優しい魔法は かかることなく、 言葉だけが残された たとえば、誰もが幸せになれる 結末なんて望めなくても キミの心だけが ねぇ、 泣いて終わるなんて... 昔みたいになんて 簡単には言えないけれど 蒼白のキミに伝えたい いつまでも 忘れたりしないって 白雨に霞む 空が ただ切なく思えるのは 寂しい風景その下の どこかにキミがいるから...... 「ありがとうなんて感情が、 まだあたしにもあったんだ。 でも、これで本当の さよならにしよう…… …?ね?」 傷つき 傷つけ 遠ざけて 何故……? シスフェリア 誓った未来は今でも 褪せることはなく この胸にあるよ 『少年にかけられた小さな魔法。 シスフェリアとの思い出が 消えてしまうこと。 幸せに生きられるように、 ということ。 その二つの魔法は相反し、 少年の中で両立することは 不可能だった。 彼女との記憶を 忘れてしまうことは、 少年にとって何一つ 幸せなんかじゃなくて。 魔法はその想いの強さに 掻き消され、無効化されていた。 少年は再び旅路をゆく。 次会えたときは、 今度は自分から 再会の口付けをするのだと、 心に誓って……』 「蒼白の果て。 それがどんなに遠くても、 いつかきっと――――」