電車は間もなく最寄りに着く頃 身支度軽めにビニールの傘を開く 水色海月の短めのそれを 右手にぶら下げいつもの道を急ぐ 水溜り弾いて街路を駆けていく 夜更けの水無月 踵に染み込む気まずさは見逃して 息切れを誤魔化して足運ぶ心臓と 寄る辺に雨傘 ねえきっと夜は明ける? 三匹子猫が雨宿りをして 母親待ちつつ並んで顔を洗う 水色海月の露先滴る 切り札片手に横降りの街を行く 雨音が煩くて聞こえない足音と 隠れた三日月 昨夜の謎めく不機嫌がこだまして そうこうしてた内にいつの間に時が 来て 震える指先 ああきっと雨は上がる 身体は間もなく最寄に着く頃 少し骨折れたビニールの傘を閉じる 嫌味に小さく、 そっと千切れた雲間を縫って 雨空に三日月が揺れる 水溜り弾いて街路を駆けていく 夜更けの水無月 昨夜の弱みも気まずさも見逃して? 息切れを誤魔化してただ選ぶ 言の葉と 寄る辺に雨傘 ねえきっと夜は明ける ああ…そっと雨が上がる