ワイン2本と発泡酒2缶を カゴに入れ コンビニのレジに持って行く ショッピングモールでの買い物は 大変 そこでプレゼントを選ぶとなると ほぼ一日仕事だ 目星の物が見つかっても 一周はしてみる 買ったあとで “それ以上”が見つかると 悲しいからだ 慣れない店に入ると 汗がふき出るのって あれ皆なんかな? だからプレゼントを買いに行く時は 少し薄着でタオルを持ってでかける 半日ほどかけ ようやく一本のマフラーに心が 決まった プレゼント包装を依頼すると イヤそうな顔 言うべき何かがある気がしたが 口にする度胸はなかった 愛想を遮断することで胸の内を 伝えようとしたが 余計に胸がつかえただけだった 手渡された雑に包まれたギフト 皺の寄ったテープ マウスで描かれたような輪郭 思いが込もってないどころか 込もってない思いが包まれており 「これを贈るのはいややなー」 と思った 店員さんが代わるのを待ち 返品をお願いした 言うなれば 包み方が気に入らないという クレームに対し その店員さんは「分かります…」 と悲しそうな顔をしてくれ 快く返品に応じてくださった はじめからこの店員さんから 買えていたら 今頃このマフラーを選べた 事実をより好きになって 晴れやかな気持ちでコーヒーでも 飲んでいたかもしれない そう思うと 悲しかった 「明日 別の場所で選び直すか…」 愛のない態度ってのは 知らんところで人の未来を変える 迷子になった俺の心が 預けられはしていないかと 館内放送に耳をすませる ワイン2本と発泡酒2缶を手渡すと この時間帯の主であるデベクは 何のこともなくそのワインと 発泡酒を オセロのはじまりみたいに クロスして袋に入れてくれた やけに重みがなじむ その袋をぶらぶらしながら 帰ってると いつかの悲しかった気持ちが オセロのように反転した 同じ“物を買う”という行為でも 人は悲しくなったり 救われたりする