「そうか、そうか、つまり君は、 そんなやつなんだな。」 そうか、そうか。つまり君は、 鱗粉のついた手で僕に触れていた。 そうだ、そうだ。つまり君は、 明日の朝にでも 虎になっているだろう。 まったく高尚な愛の理論家、 そっちこそ迂遠な愛の実際家、 活字中毒といえば聞こえはいい。 演じたがってる文学講義、 内実のない教科書通り、 気が済むまで付き合うよ。 どうか、どうか。その掌で、 鱗粉のついた手で僕に触れないで。 そうだ、そうだ。ずっと君は、 そんなやつだったな。 そうか、そうか。つまり君は、 カムパネルラを見失ったようだ。 そうだ、そうだ。つまり君は、 ほんとうのさいわいなんて 求めていなかった。 絶対に相通ぜざるもの、 氷炭相容れざるもの、 これら全ての引用に意味などない。 演じたがってる文学講義、 内実のない教科書通り、 気が済むまでは。 「こんな夢を見た。」 百年待てなかった。 どうか、どうか。その掌で、 鱗粉のついた手で僕に触れないで。 そうだ、そうだ。ずっと君は、 そんなやつだったな。 締めくくる、 「神様みたいないい子でした」 美化して、気化して。 なんだそれって、 泣きたくなるような理屈ばかりで。 なぞる誰かの言葉を いつか要らなくなるまで。