「なんでもないよ」ぼくの口癖は 本当はだれか呼んでいる 「なんだっていいよ」嘯いた言葉は わざとらしく 響いて消えた ぼくの眼は 雪を溶かす日差しを眺めては シャッターを切る 言葉はいつでもこぼれ落ちてしまう 「……」 沈黙じゃなにひとつも つたわらなくて もどかしくなる 「……」 ぼくの舌はいつも 思い通りに動きやしないよ ぼくの手は 温かな体温を 冷たい朝の空気を 忘れてしまわぬように 確かに握りしめる 言葉はいつでもこぼれ落ちてしまう 鮮やかな風景を 優しく響く声を 華やかな香りを 通り過ぎてゆく日々を