方位自転車

歌詞

はじめに赤ワインをドボドボ呑んで 酔いどれ一匹完成させたらこぎ 出そう でっかいカゴつけた変な自転車 ベルのかわりに球体の小さな 方位磁石がついている どこへ行くかなんてわからない 「もう、 どうでもいいや」って訳じゃなくて 「方角なんかどっちでもかまわな い」って訳だ 道しるべの日記 赤ワイン片手に環状六号線を 下ってゆく 方位磁石も景色もグルグル回る 僕は今 ベロベロに酔っていてお墓のように 冷静だ ペダルは快調 風に舞うおびただしい「解釈」 をつきぬけろ ほら、 道だってこんなに酔っぱらってるよ 君が行けなかった所へ行こう 君がどこへ 行きたかったのかわからないけど 連れてっておくれ どこでもいいから 穏やかな景色の方へ 方位自転車 ある時、君は パチンコ玉の上で泳ぐ生真面目な 人たちの中でひとりぼっちだった でも、 淋しさの 原因はひとりだったからじゃない 誰とも話があわなかったからだ 整理しても整理しても心は 簡単にならない くり返しくり返す 先の見えない日常と焦燥 誰かのせいにしたいのに 自分のせいにしかできないんだ もう、誰にも説明しなくていいよ とにかく自転車こいで赤 ワインラッパ飲みだ 君が行きたかった所へ行こう 君がどこへ 行きたかったのかさっぱりわからな いけど 連れてっておくれ どこでもいいから 穏やかな景色の方へ 方位自転車 この道でいいのか 方位磁石は何も言わず クルクルまわるだけ 深夜のコンビニエンスストアで ワインをもう一本 二人連れのバカ男 こんな 夜更けにショコラの話してやがる 誰かを憎みたい強烈に誰かを 憎みたい 誰かのせいにできたらどんなにいい だろう だけど、 君も僕もこの男たちとおんなじだ いい年こいて無邪気を装ってる 二重人格じゃない 人間なんているのか 弱い意志と強靭な自我 なんだか君と呑んでるような 気がしてきたよ ところで、 君が行きたかった所なんて 本当にあるのか? 連れてっておくれ どこでもいいから 穏やかな景色の方へ 方位自転車 歌の中に出てくる女は 美化されすぎててうそくさい 老人になりたての男は この世にルールがあると信じ 込んでいる シワのない顔で微笑んではいるが そのこめかみはゾッとするほど 冷たい 引っ込み思案の飛び出しナイフ あなたのそばにいるナイーブな 図々しいひと ナイーブなナイフがチクチクと 相手に刺さってるのに気づかない 僕らは自分がきらいな 人間とそっくりじゃないか 救急車のサイレンを回しているのは 僕らの眠け ツタで裏帳簿をかくしている 内科医院 方位磁石が叫んでる 「もっともっとスピードをあげろ、 意味に追いつかれるな」 君が行きたかった所へ行けそうだよ 考えれば考える程疑問はふくらみ わかろうとすればするほどその 本質から遠ざかってしまう でも本質は一番最初の所にいて 僕らが戻ってくるのを待っている 「それ知ってたでしょ」って 言いながら 抽象を理解するために具体を 解体する バラバラになった具体を飲みこみ、 一気に吐き出し空を飛ぶ みてごらんこれが世界だよ 一瞬を満載した夥しい「解釈」だ 「今」を生きていながら「今」 がさっぱりわからない 損と得が 僕らをしめつけるまえにすべてのこ とからとり残されよう 僕は信号と現代を無視して 花壇につっこみひっくり返った 連れてっておくれ どこでもいいから 穏やかな景色の方へ 方位自転車 赤ワインラッパ飲み 100台ほどの タクシーとすれちがってる 真っ暗な車道を 矢印みたいに突っ走る 8人の警官が血相かえて 追っかけてくる でもこれは盗難車じゃないよ なんだか潮の香り もう、ずいぶん遠くまで来た もしかしたら海行きたかったのか? そういえば一度も 一緒に行ったことがなかったね 君が行きたかった所が今わかったよ 小学生のころ自転車で 冒険に出ようとした君 すんでの所で親にとめられ 決行できなかった だから大人になって東京中を 自転車で走り回り でっかいカゴにどっさりと古本を セドりつつけた 君は誰もせめないし けたたましく自分を 鳴らしたりしなかった その証拠に方位磁石 ベルのかわりに小さな 方位磁石がついている 君が置いてったこの自転車 東京湾へ捨てに行こう 連れてっておくれ どこでもいいから 穏やかな景色の方へ 方位自転車 でっかいカゴつけた変な自転車 ベルのかわりに球体の小さな 方位磁石がついている 僕たちが行きたかった所はもうすぐ 君と僕を同時に捨てる でも…いつの間にか夜が 明けたみたい 海ひとめ見たかったけど 疲れちゃったよ タクシー拾って帰るわ 記念に、ショコラでも買って バイバイ… La La La…La La La…