箱入り娘の君は 今ならどこかで 誰かと打ち解けて 笑ってるかな 北風を受けて凍える僕の手のひらに 落ちる沫雪 迷いなく行く人よ 瑞々しい手で 冬の背中を押して 街を変えてくれ 公営団地の入り口に 椿の花が咲き乱れてる まるで人の行く先を 広げた手でとどめるように 日常のなかのひとひらに 君が染めた色を見るたびに いつもそこで立ち止まり 春を待ちこがれる羽目になる 濡れた靴で歩き続け 風邪をこじらせて 次の日の朝も下がらない熱 君になりすました花が 夢に出てきては 僕を弱らせる 淀み無くいつまでも 咲き誇りたい 路地裏の片隅で 凍り付いたように 次々と花が落ちて行く ポトリポトリ僕の目の前で まるで人の行く末を 見捨てて先へ向かうように 水面に揺られた花びらが 恥ずかしげに頬を染めている だから僕は立ち上がり 川沿いの道を走っていく 公営団地の入り口に 椿の花が咲き乱れてる まるで人の行く先を 広げた手でとどめるように 日常のなかのひとひらに 僕は迷いながら手を伸ばし やがてそこに立ち止まり 君を待ち焦がれる花になる