「ひとつの、夢」 曇ったガラスの水 甘い音を奏でる白濁の牛乳瓶 「ふたつの、色」 爪の奥の夕暮れ 背筋に張り付いた鈍い銀色の鏡像 「わたしの、手に」 「わたしの、この両手に」 重く振りかかる現実の足跡を辿った 「あなたの、死に」 「あなたの、その生命に」 想いの糸を張り詰めて進もう綱渡り アルコールの満ちた部屋 錆びた秒針は時を無視して 不規則に流れ出る 音と言の葉は私に深く刺さってく ああ… 何をしたんだろう 繰り返しの拍動が 視界を赤に染めて行く おとぎ話のはじまりだ さあさみんな寄っておいで ひとりの空間に ひとつの赤い窓に 「モウイイカイ」「マダデスヨ」っ て 小指で文字刻んだ 足音はもう、 スタッカートの音はもう 細分化した水滴に 吸い込まれ聞こえない 今夜見よう、夢の続き 誰もいない、わたしが世界 色褪せた小さなゆりかごに 帰ろうか 帰ろうよ そっと そっと、静かに 声を 声を 押し殺して 私は今、切先を 喉元に押し当てて 過去も未来も全て忘れて ぎゅっと 手のひら握る 滴り落ちる血の赤の 無限の闇に委ねて 私は今、瞳を閉じます お別れ、さようなら。