『少女を取り巻く状況が 一変したのは、 父親の正妻とその娘が 惨殺されているのが 発見されてからのこと 犯人の痕跡はなく、 跡継ぎの期待は少女に寄せられた 父親は 生涯初めてその存在に 気づいたかのように、 目を細め少女に笑いかけた――』 廻る――穢れた祈りは、霞み 今も――止め処ないヒカリ探して 『間断なく与えられる愛情 誰からも虐げられることなく、 路傍の欠片のように 扱われることもない ――これも、 神が与えし奇跡なのだろうか?』 「もう一人の自分なんて、 もう……いらない」 ひとつ――叶えば次をも願い ふたつ――叶えば更にと求めた 木々はさざめき 謡うように 祝福に揺れる 木漏れ日 神様はいたんだとはしゃぐ少女 それを否定する少女 最後の邂逅は 眠りの奥 優しい終焉は 夢の彼方へと遠く消えて―― 「知ってる? 夢の中で死ぬと 神様に逢えるっていう伝承。 試してみようよ。 存在するのか、 それともしないのか……」 『少女は歌うように囁いた 頬を撫でるように柔らかな風の吹く 丘で、静かに横たわる 安心しきったようにゆっくりと 閉ざされる瞳 神様に会って、 夢から覚めるまでお礼を 言うのだと、微笑んで……』 「ねぇ……私だけを、 ずっと愛して――」 「孤独の果ては、もう見てきたよ すべての感情が排除される、 悲しい場所 もう、あそこには戻らない」 廻る――穢れた祈りは霞み 未だ――止め処ないヒカリ探して 眠る少女は 疑いもせず 夢の中静かに 沈んだ そんな御伽噺なんて本当は 存在しないというのに 孤独な絶望は分け合えても 幸福の共有はできないのか……? 最後の邂逅は 眠りの奥 優しい終焉は 夢の彼方へと遠く消えた―― 「夢の中で、 ひとつの魂が失われていった 翌朝少女が目を覚ましたときには、 あんなに 傍にあったもうひとつの 意識はどこにも感じられない ひとつの器に住まう片翼の、 ただ唯一の殺し方』 「ね? 神様なんかいなかったでしょう?」 『残酷に笑う少女は、ラスティか。 それともリスティか ――あるいは、 最早そのどちらでもないのか……』