嘗め回すような 重たい夜の道路 踏み込んだペダルは 街灯に残像 鈍い銅が混じる空を睨んだ 張り付いたシャツに 温い風が滑る 高架線の下 夜の黒を纏って 歪な程 甘い香りを漂わせて チェーンが外れた音 振り返ってすぐに いたずらっぽく笑う 君が綺麗だった 夢を見ていたみたい それくらいに君だけがぼんやり 夜に浮かんで 何も言わずにどれだけ時間が 過ぎていった 月は今も翳らないまま 微笑み湛えて僕のことを見るより 君は その悲しみをじっと 見ているかのようで 最後の言葉が僕から君を泳ぐ前に 溺れてしまいそうだって 気付いていたんだ 溢れる涙 憚ることもなく 拾い集めた 花弁がいつまでだって香って 夢を見ていたみたい 悲しみさえこんなに美しいまま寄り 添って 青水無月の夜に風が横切っていった 君は今も一夜の夢に枯れないままで