ゆれる声の中でたわむれる 耳に聞こえるカナリアの声 少し痛いけど 止まらない波に向かう ひとつの声 押し潰して からからになって 空へのぼる 繰り返すの もっときれいになるために 振り向いてもらうため いつかの誰かと出会ってから 私の心にはしっかりと その声だけが刻まれているの 傷だらけの私の胸に そっと染み込んでうるわしてくれた 「彼の言葉 失われないように」 海にただただ祈る やけに冷たい響きの名前の彼 体は消えそうに透けていた 歌うたいになりたくて逃げ 出してきた こんな体だけどいい 自分には声がある そう言って年をとった ギターかかえて 異国のメロディー口ずさむ 初めてなのにどこかなつかしい 香りがした それはいつの間にか私を掴んで 離さなくて 三日月の夜 体寄せ合って眠った 潮の味とかすかな月光 誰かに見つけられることはなかった はずだった ある日黒い男らが彼を銃で 狩りにやってきた 泣き叫ぶ間もなく彼が私をかばって 息絶えた彼 生き残った私 これからどうすればいいの ふいにあの声が流れた 「自分には声がある」 ゆれる声の中でたわむれる 耳に聞こえるカナリアの声 こんな心だけどいい 私には声がある