春がくるたびに さらわれていく 桜散る朝に 青葉を踏んだ 輪郭を伝う 花風に聞く 愛があふれたの 坂道の空 あの頃のままで いつでも逃げた 解けてく思い出には 私を塗りつぶす 愛あるいは君 戸惑って見えた 四月に生まれた たよりないもの 明日があるから 嫌いって言えた 明日があるから からかってみたの 春がくるたびに さらわれていく 見えなくなるまで 手を振ってみせて 詩体、世まよいごと 声はここにある 軌跡、愛しい人 どれもたよりない ひらいた意図は からまった迷路 ひらりと香るもの コインランドリイ 夜は明滅した 声は届かない 少し怒ったこと それは弱さゆえ 帰りの道は くぐもって伸びた 今際 毎秒そう 君はどこに横顔 愛あるいは君 戸惑って見えた 四月に生まれた たよりないもの 明日があるから ただ待ってみたの 明日があるから からかってみたの 夕暮れを明け方と思ってみる遊び 自転車に乗ってもいいし ひらいた手のひらの上で遊ぼうか 海のむこう切なさとはすこしちがう 音楽室から見えた白い船 指で作った輪の中 光の円環深まるほどに 誰かが消える相反する首飾り 体育館 半地下の埃ただいて在った 乾いた声春は森から現れた 昨日の続き それを信じられなくて 私はいつだって新しい朝ご飯を 食べた 愛の上に 奇跡があるのかしらそれとも 奇跡の先に愛が生まれるのかしら 凡庸な議題は宇宙に似ている 私は光死にゆく星の最期の赤い生 陰と焦点距離 解明なんてできないはずよ 降って埋もれて 春の土に還るだけ 春がくるたびに さらわれていく 桜散る朝に 青葉を踏んだ 輪郭を伝う 花風に聞く 愛があふれたの 坂道の空