水溜まりの中に 五十円玉が落ちていた 僕はそれを拾って ポケットにしまった 僕の蝙蝠傘には所々穴が空いていて そのすき間から時に 見たくないものが見える ポロロン、 ポロロン、 雨が唄うよ 家に帰ってみると コンロでお湯が沸いていて ちゃぶ台の向こうに 黒い影が座っていた 僕と同じ服を着て僕と同じ髪型で 僕と同じ顔だけど ほくろの位置がちょっとちがう ポロロン、 ポロロン、 雨が唄うよ ポロロン、 ポロロン、 雨が唄うよ 君が拾った五十円玉は 三途の川の渡し賃さ そう言って微笑んだ影の その歯はとても穢かった こうしてとてもあっけなく 僕は何か別のものと 入れ替わってしまった 乗っ取られてしまった 僕の蝙蝠傘には所々穴が空いていて そのすき間から時に 見たくないものが見える