空飛ぶ魚の憂鬱は 泳ぎが苦手なことである まだ見ぬ空の広さを浮かべながら 知識は塩辛く錆びていく 見上げた 空飛ぶ魚の憂鬱は 泳ぎが苦手なことである おそらく雨で濡らした身体を 鏡でずっと眺めているのさ どれだけ覚えた波を増やしても あの雲とやらは生まれない なぜだか くらべて私の憂鬱は ここから旅立てないことである たいした歴史もないのにまた 名残惜しく振り向いてみたり 海に残る 平和が輪になって歌う 「僕らの英雄!僕らの英雄!」 偉大な彼の鱗だけがはがれた 故郷に帰れず涙を拭う 空飛ぶ魚の憂鬱は 誰にも哀しみ与えない いつもいつも弱い我らを こうして夢の中へ くらべて私の憂鬱は ここから旅立てないことである 羨む彼のまなざしを 図れない彼のさびしさを知りながら