初めて訪れた 隣の国済州の島 自分のルーツ探しだとか カッコつけた言葉を並べて 何が知りたいとか どうしたいかもわからないまま 踏みしめた僕の血が 流れる故郷の島 知人の紹介で 世話をしてくれたサンチョルさん 海辺の店の店主で 郷土料理を作ってくれた どこか懐かしい匂いが 鼻の奥を通り過ぎていく モンクという料理だと 日本の人が教えてくれた 流れ行く景色の中 故郷を目指し車は行く 流れ行く言葉も 看板の文字もわからない この国にくれば 何かはじまると思った この国にくれば 何かわかるかと思った この国にくれば 何か見つかると思った この国にきたら 何も知らない自分がいた 日本を旅立つ前 父から聞いた本籍地 キョレリという街が どうやら僕の故郷らしい 役場にたどり着いて じいちゃんの名前を伝える 他に何か聞かれても 僕にはなにもわからない 結局探したものは 何一つわからなかった かわりに役場の人が 街のことを教えてくれた この国で生きてたら 学校で教わったのかな この道や街並みを 愛おしく思えたのかな 照りつける太陽と 広大なハルラの山 見上げた青空を じいちゃんも見上げたのかな 帰り道立ち寄った 馬の牧場の片隅 奥歯を噛み締めて 石を一つ拾い持ち帰った この国にくれば 何かはじまると思った この国にくれば 何かわかるかと思った この国にくれば 何か見つかると思った この国にきたら 何も知らない自分がいた 湧いてきたノスタルジーと 黙ったまま話してると 「食事にしないか?」と 地元の人が誘ってくれた ぎこちなくお酒を注ぎ 年下は動けと言われ 好きじゃないと愚痴ってた 父の気持ちを少し知った 立ち寄ったコンビニに ABCチョコが売ってた じいちゃんの家に行くと いつもこれが置いてあったな まだ僕が小さな頃 毎週のように通った ボロボロの傾いた 二階建ての祖父母の家 今から11年前 父と祖父母は会わなくなった 家族の間に何が あったのか僕は知らない 今更どんな顔で 今更何を話せば 逃げている間に ばあちゃんはもういなくなった 故郷の大地が 黙ったまま語りかける そうか僕にはずっと 会いたい人がいたんだ 自分の探してた「何か」は 元からここにはなかった 大それた自分探しの旅に 何を求めていたの? 何を探していたの? 元から自分の中に在るじゃないか この場所でわかったこと この国で気づいたこと ずっとずっと気づかないふりをして 逃げ続けていただけの 自分がいたこと それだけでもう十分じゃないかい 今から じいちゃんに会いに行こう じいちゃんに会いに行こう じいちゃんに会いに行こう 済州の島で買った酒を持って じいちゃんに会いに行こう 今更でも会いに行こう じいちゃんに会いに行こう 生きているのかもわからなくても じいちゃんに会いたかった じいちゃんに会いたかったよ じいちゃんに会いたかった たった一人の僕のじいちゃんに たった一人の僕のルーツに この場所に来てやっとわかった