空は青いな書き割りの 夕べに蛙の雨が降る 破れかぶれの地平線 結膜炎が覗き込む 捻子(ねじ)の壊れた時計台 虚無を刻んでチイパッパ 瘧(おこり)の狛犬ひり出した でんでん太鼓蓄音機 墓掘り人夫の餞別は 屠(ほふ)る吾(あ)が子の三杯酢 君麗しの死刑台 滴る血潮高砂や 狐の嫁入り通り魔の 錆びた刃が香ばしい どっとはらい どっとはらい 正気の沙汰はおしまい どっとはらい どっとはらい 狂気の沙汰の始まり 端午の節句の沖合で バタフライなぞするピアノ 溺れてみたのはいつの日か あれは去年の謝肉祭 楡(にれ)の木陰で処女が泣く 恨みざらまし番頭さん 黄昏偲ぶ一輪車 きりもみしては交尾する 鹿鳴館の天辺で 酌婦のアジる阿呆陀羅経 猫の尿(いばり)の檜風呂 浮かぶスメグマ有り難や 上の姉様身を投げし セーヌの畔(ほとり)に小判湧く どっとはらい どっとはらい 正気の沙汰はおしまい どっとはらい どっとはらい 狂気の沙汰の始まり 曇天つんざく朱印船 沈む夕陽の浅ましさ 朧月夜は生き別れ きのこ雲だよおっかさん 巡る因果の平方根 唐竹割りのかぐや姫 おぼこ娘もお歯黒の 髷の島田が恐ろしい どっとはらい どっとはらい 正気の沙汰はおしまい どっとはらい どっとはらい 狂気の沙汰の始まり どっとはらい どっとはらい 正気の沙汰はおしまい どっとはらい どっとはらい 狂気の沙汰の始まり どっとはらい