ここまで来たことは 誰にも話さない 足跡がここから 途絶えていることや 町役場の向かい 薬局のカエルが あんまり日に焼けて 取り替えられたとか 犬ふぐりの花が咲く頃に あの人が 帰るとか 今更、今更、今更、 話さない ここまで来たことは 誰にも話さない 飴売りがここから こちらへ来ぬことや デパート勤めの お姉さんが昔 お赤飯炊かれて 弟が泣いたとか 斜向かいの家のピアノの音が このごろしなくなったとか 下宿の学生が夢日記をやめて 田舎の父親に手紙を書いたとか 犬ふぐりの花が咲く頃に 君が帰って 来るだとか 今更、今更、今更、 話さない