赤信号を待つ人混みに紛れる 伏し目がちな少年の 開きかけた瞳孔は その硬直を示していた ポケットに忍び込ませた 手汗で濡れた小型のナイフで 行先不明の運命と 刺し違えようとしていた 僕たちは見ている どこかで気付いている 少年はその切先を信じている あの青よりも深く連れ去って もう二度と戻れない場所まで 何かを呪って突き刺してもまだ 変われないまま 昼下がりの交差点 鳴るサイレン 慌て出す雑踏の悲鳴、怒号 鮮血を浴びて気が触れた様子を 取り囲むスマートフォン ここぞとばかりに報じるメディア 液晶に映るのはまるでゲルニカ 君がここから抜け出すには その刃渡りでは足りないのかもね 僕たちは知っている 本当は気付いている この世界は終わりに近づいている 身を委ねるなら 狂信や呪いでも この手にあるのなら何でもよかった あの青よりも深く連れ去って もう二度と戻れない場所まで 何かを呪って突き刺してもまだ 変われないまま 僕らを残して壊れていく 饒舌で足りない世界で 今も呆然と空を仰ぐ それでも明日は変わらず 続いていく