それは美しく崩壊する とても遅い速度で しかし確実に もうここには誰もいない 痕跡だけが残っている 誰かが住んだ 誰かが生きた そんな痕跡が それは大切なものじゃない それは大事なものでもない もうここには何もない 痕跡だけが残っている 誰かが生んだ 誰かが作った そんな痕跡が 今 埋もれていく かすかな光も遮られ 再び目が覚めるころには すべてが変わっていることだろう いつかたぶんきっと 起こることだろうと考えていたら それはもうとっくに起こっていて 忘れていた事実だった 今 砕けてゆく ひとつとして同じ形はなく ぶつかり合い 削れて やがて擦り潰されて消えていく この手のなかに思い出される 痕跡が少しずつなくなるのを じっと見ている