雨がしとしと降っていた。 紙を濡らさぬように上着で隠して、 持ち込んだ原稿用紙、 この子も駄目だった。 ふっと口を衝く、「才無いわ。」 書かぬ理由をすり替えた。 ソフトな死でさえ選べんわ。 終わる為にも勇気が要るなぁ。 遅過ぎんだってもう。 僕の価値は、 これ一つだと思っていた。 間違いか。 裏切りの影、 訝しげなピーターパン。 曰く、アイロニカルな 「もう何処にも行けないね。」 いずれ、去る時が来ることは 知っていた事だから。 せめて、自分の手で 終わりにしたいんだ。 縛られずに生きてた。 それが婉美であると信じて死んだ、 これまでの僕を弔ってやろう。 何かに縛られ生きる、 それこそが救いと知って、 決めたんだ。 さらば、ネバーランド。 僕は大人になったのに、 それらしい事言って 終わりにしたのに、 何故、僕の目に手を振り嗤う アイツが映るんだ。 あれから味がしないんだ。 何やってる時も、 緩やかな死を覚えていた。 もう言い訳出来ない! 色も、声も、香りも、痛みも、 体温も、喜も、怒も、 楽も、アイも。 全部忘れていた。 ねぇ、だからさ。 もう一度、思い出させて! 何事も無く「ん。」と 手を差し出すピーターパン。 曰く、「パラドキシカルに もう何処にも行けないぜ。」 いずれ、死ぬ時が来る迄は 生きている方がマシだから。 もう二度と終わりにはしない! 僕に無いものばかりだ。 「それが何だ!」だなんて 言えたのならば、 強がりさえ僕の味方になるだろう。 そうやって決意を持てた 僕こそが、彼だと知った。 僕の場所、 ここはネバーランド。