栞を挟んだ儘の本とか 飲みかけのコーヒー或いは 空の花瓶とか 不検束な造形が目を奪うのは 僕自身もそうであるから バイト先の古いカフェでぼんやり 眺めてる天井 身の丈程の高さで 真白の塗装が剥がれ落ちている みたいな暮らしを抜け 出せずに居るんだ 「もういっそ死んでしまえたなら」 何回だって口遊む 最上階 廃ビルに上って 不確かな街を見下ろして 不意に目を遣った夜と海の 間に座った君は目を丸くして ぎこちない会話 上擦る声 不検束な日々を抜け出せる気がした 「もういっそ死んでしまえたなら」 「何回だって口遊もう」 最上階 廃ビルに上って 不確かな君が しかく になる前に 宛の無い手紙と花束抱えて 不確かな街を迷いながら 今日も君に会いに行くんだよ 名前を聞かせてよ 宵街が寝息立てる頃 さかさまの街へ