鼻緒すげた君の伸びやかさを 何と言おう 裏直して!とねだる子供の声 聞こえない体でね 桃の花が咲き始めた 稀に見るような筆さばき 上の句はなんて綴った? 愛しい左手 桃の花が咲き初めたよ いずれ菖蒲か杜若 星庵を夜が染めてゆく いじらしい色 頭の中に浮かぶ音楽 反射す琴がなんとも儚そう 山に来ていた 時は止まった 独り占めしたい 私のわがまま 桃の花が咲き乱れて この世は夢と化すばかり 絢爛な単衣の説明したいよ 汗衫の子は誰?と訊くもをかし 夕げ席 色とりどりの華 恋を塗った茶碗のゆかしさがすき 桃の花が咲き始めた 万葉集を暗唱して 悦に入るあなたの小指、留めたい 未来で 桃の花が舞う夜空に 恋は謎に満ちてゆくよ 絣、焚き染めた裏腹 憎らしい人 月が合図で始まる宴 おもちゃみたいな恋でいいのかな 酒盛りしてた 月は見ていた 記憶がほしい あなたのわがまま 桃の花が狂い咲いて 街はただ綺麗になった 下の句を思いつかない振りして ごめんね 桃の花が咲き乱れて この世は夢と化すばかり 史実じゃない気持ちだけが ここに、ある