波模様に君の声がした 黄緑の線の縫い目を伝って 響く 気がつけば誰かの筆で 描き足されていた魚の群れが 身体中に絡まり噛みついた 「ねえ、私 消えないで 消えないで」 壊れそうな唇 君を世界の渦が飲み込んで 笑う顔さえも似通って 好きな味も嫌いな音もわからない 廻る季節は春を失って 解けない氷 ただ眺めていた ゆらりるらりるら 眩んでいく 突き刺すように冷たく優しい夜風 髪をなびかせ何かを言いかけていた この手を握って 震えていてもいいから ざわめきくぐって ひとつだけを守って コピーされた言葉で巨大化した ヒーローは いらないわ いらないわ 裸足のつま先で 明日世界の渦を抜け出して 君だけが泣いたとしても 変わらないで 塗り続けていてよ その色で ひとり閉じてしまったお話も 綺麗なままそこに眠っていて ほら、胸の奥で息をしている ほら、胸の奥で息をしている