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ウォルターの報われない世界

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  • 2014.10.15
  • 6:25
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歌詞

ウォルターは浮き足立っていた 何しろ久しぶりに 我が家に帰れるからだ 工場勤務での労働を経ての 何日ぶりかに会う家族 どんな顔をしていたか忘れそうだ それにしても腹が減った 職場で朝食を食べてから 何も口にしていない カバンの中を漁り、 昨日5セントで買った ピーナッツバターと クラッカーを見つけると 寝酒用に仕込んでおいた 残り僅かなローゼスで クラッカーを流し込んだ 浮き足立っていた気分が一変して 気持ち悪くなってしまい 台無しとなってしまった帰り道を、 それでも妻に会える喜びで それをこらえながら ウォルターは歩いた ウォルターの家まであと8マイル 彼にはおよそ友達と呼べる シロモノはいなかったが、 生活上最も最低限で ルーティンな繋がりはあった そんな道すがらウォルターは 顔見知りで昔の恋人 マーガレットに出会う マーガレットはどこかよそよそしく 目を合わせないように話していた ウォルターはそんな彼女の仕草より さっき飲み干した胃の中の ピーナッツバターとウイスキーの 暴走によって 心底うんざりしていたので、 マーガレットの話は まるで耳に入らなかった ただ一つ 気がかりな言葉が引っかかった 「あなたのせいでもあるわよね」 やはりどこか よそよそしく話す彼女の仕草は、 テキーラを100杯以上煽った後でも 爪痕を残すセリフだった ウォルターの家まであと6マイル 多くを語らず二人は別れ ウォルターは少々早足になりながら 家路へと急いだ ウォルターには一つ 気になるようなことがあった 彼の妻はマーガレットと 友人でもあった だが妻に昔のことを伝えるような 野暮なことはしていない ウォルターの家から人影が いそいそと出ていくのが見える こんな夜更けに一体誰が? ウォルターの家まであと1マイル ウォルターは家に着いた もう寝静まったであろう寝室へと 彼は真っ先に向かい 妻と子供、 枕を共にしているところを 確認してから溜息を漏らす ウォルターがこの ボロいマンションに 引っ越してきてから 4ヶ月、仕事、家、仕事と なかなかかまってやる ことも出来ない 毎日が申し訳なくもあった そんな事を思いながらウォルターは 自分のパジャマに 袖を通していたその時 ほのかに放つ男の臭いが 鼻腔を掠めた その臭いはまるで 記憶にないものだった 元々臆病なウォルターは 瞬時に色々な事を想像した だがまさかと思い直しかぶりを振る リビングに何気無く添えられた グラスやワインの空き瓶 部屋から漂う異様な空気に ウォルターは一抹の不安を 感じずにはいられなかった ふとマーガレットの言葉が 頭をよぎる 彼の生まれ持った性分もあって ウォルターには問いただす自信も 勇気も持ち合わせていなかった 彼の心はだんだんと 悪魔によって支配されていく 気の弱いウォルターは 疑心暗鬼の魔力に 打ち克つことなんて出来なかった どうしようも出来ないウォルターは シーツに身を包み ただ朝が来るのを待った だが今夜の彼にとって 夜はあまりにも長すぎた もう何も分からない 朝が来る少し前に ウォルターはアスピリンを4錠 ローゼスで飲み干して 震えながら妻の首に 力一杯手をかける 妻は壊れたようだ 握り締めた首に違和感を覚えた妻が 一瞬目を大きく見開く 声にならない声で 妻は口をパクパクさせた 「あなたのせいだから」 ウォルターには友達と呼べる シロモノはいない 彼は心底うんざりしていた ウォルターは目を閉じた そのまま彼はすやすやと寝ている 自分の子供の首にも手を延ばした ウォルターは どこで何を間違ったのか 思考を巡らせながら マンションの屋上へ向かった 階段を一段ずつ登りながら おれは一体 何のためにがんばっていたのかを 考えていた ウォルターはそのまま さっき切り取った妻と子供の手を 握りしめながら屋上から飛び降りた ウォルターは死んだ 地面に横たわりながら ウォルターは思い出していた 家族と暮らしていた何気無い日々と ポケットに詰め込んだままの 20ドルのことを ウォルターに残ったのは 嫌いだった友人と 報われないこの世界だけだった

7曲 | 2014

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