点滴をつなぐ左腕 まだ体温、落ちてないね 静脈にそっと触れたら 今夜も 私の患者(こ)になって 酸素濃度 さっきより低め 「目は閉じて」 そう、ゆっくり 刺すときは 何も言わない 感じればそれで充分 「怖いの?」 「平気だよね?」 「ほら、息が整ってきた」 必要なのは 声じゃなくて 脈の奥で鳴る鼓動 優しくするね? ゆっくり落ちて まぶたの裏で 私だけ見て? 薬じゃないのに効いてくるでしょ? 数えて 数えて 消えてく おぼえて 覚えて 溺れて 大丈夫だよ 大丈夫だよ これがあなたの 処方箋 心電図 少し荒れてる でもそれも好きだったりする コードブルーなんて呼ばない これは私だけの手当て 点滴よりも効くものを 体の奥に入れてあげる 許可はいらない もう遅い 愛も倫理も眠ってる 聴診器で探る呼吸 だんだんリズムが似てくる 声も名前も 忘れていって ただ体だけが正直になる 優しくするね? 静かに落ちて 吐息ひとつが 合図になる 注射よりも深く染みてく 数えて 数えて 溶けてく なぞって なぞって 壊れて 大丈夫だよ 大丈夫だよ これがあなたの 処方箋 優しくするね 声も要らない 私の指が 最後の処置 あなたの奥に 針を残すよ 眠って 眠って 綺麗だね 忘れて 忘れて 私を だいじょうぶだよ だいじょうぶだよ このまま静かに 処方してあげるね
