箱庭の入口で潰える前の明日をみた 誰にもとどかない 閏う季節が 扉をあける みんなが 山のいただき めざすなか ひとり 砂場で 城をたてた ひとはこわれやすいもの ── さみしくない かみさまは 丘のむこう ないしょばなし あき に はる なつ と ふゆ 季節めぐるには よっつでよかった ねえ どうして、 あのひのわたし おぼえてる ——— すべてわすれたあと ここに来たかったな かみさまは いつもいたの? いたのに? 涙がつきること なかったよ ねえ どうして? 記憶を手放せないのは そこに置き 去りにしたあのひのわたしが まだ助けを待っていたからだった ひがんじゃだめ せがんじゃだめ ほらごらん ── あたらしいおもちゃに 名が付いていく 「このふねは まだのってはいけないの」 「みんな さあさ さきにおゆきなさい」 振り返ると ちいさなこどもが泣いていた 一度だけ、と 踵を返して抱きしめた ああ これは あの日に置き去ったわたしだった ああ そうか わたしが わたしを 抱きしめないと、なんだ。 「心通じる」ススキ 「あなた許す」ネモフィラ 「憧れ」ヒマワリ 「輪廻転生」ノースポール <シキ> ほどけて ── さあ かえろう、 そろそろ あのひのからだは 土を肥やしたかな ── その上で 咲こう めぐる季節の環は綴じた。 ゆこうか 涙はうまれゆく命が、祈りが、 流すものだから。 ひかりのもとには かみさまが。 あかりのもとには たましいが。 風車はまわりつづける。 花は、咲いて。散って。また舞う。 舟は発った 箱庭の出口 潤う季節は 扉をとざす さんざめく光におぼれ 初声をあげる あれが 五番目の季節 これが はじめての涙