「ねえねえ、朝よ。もう起きて」 無機質なベルを指でなぞる 目覚めて目醒めて さあ乗り込む 鉄の箱 胃袋にゼリー入れ 心配なんてかけぬように この街の好きな所を見つけて 故郷の方角に なびいている木々を羨んで くわえた親指から飛ばしてみる 届けて 春の風に 紛れて舞い込み 安らぐように 届けて 春風吹く街の 春のような貴方へ 「さあさあ、まだよ。これからよ」 皺混じりの声 空耳した 南から僕の頬を乾かした この風は何処へゆくの 春の気を纏う 貴方の口の 端が上がりますようにと 願い 春の風に 頼りない 希望も 化けるように この街の話の下に一行 「次に帰った時にゆっくり話すね」 と付けて 届けて 春の風に 紛れず心に 笑み増すように 届けて 春風吹く街の 春のような貴方へ いつか僕の声で