新しい街での暮らしは 早々に定型化した 同じ道、行くあてもない 郊外も慣れてしまえば 低層階の景色は 空の変わり目がみえる 小さな暮らしは、 ぼんやり苦しくて、 不幸で平穏な衣食住 ぴったりにすり減っていく 忘れたいことは忘れられず、 街の余白に溶けたまま 辿り着いた毎日をただ 「慎ましい」と言う 心はちぎれ雲 風ひとつに流されて何処へ行く すこし口ずさみかけた唄は、 続きが繋がらなかった 耳鳴りの奥に聞こえる アメイジング・グレイス 何処かで、何処かで 疵を見せないなら疵はつかないから 褒められもせず、笑われもせず 辿り着いた毎日をただ 「慎ましい」と言う 心はちぎれ雲 風ひとつに流されて何処へ行く 摩耗の果て、道際に張り付く影を 早足の子ども達が 踏み締めて駆けていった わたしを突き刺すように 落陽は燃えている