こんなふうになんて、 なりたいわけじゃなかったのに。 生かされていたの。 選んできたつもりでいたの。 きゅ、と鳴らす。 波間を分け入るから、 誰か、誰か、どうか花を。 こびりつく碧い香りが、 僕のうた。 僕のすべて。 踏み出す足に絡み付く吐泥を、 喰み沈んでいる。 此処にはもう居られない。 夢だけみていたい。 我儘でもいいから。 温い現実なら要らない。 要らない。 悲しい。 苦しい。 それが僕の、選択。 場所を取らないように 高く積み上げた僕の遺影。 もう上には届かないから 昨日の分はまた地面に置いた。 一体どれだけ見て見ぬ振りを 繰り返してきたのだろう。 なんだか他人の空似にも 思えてくる。 もし生き残ることができたなら、 何よりも自由になって、 この空を漂うも翔るも思いの儘に、 そんな風に決めていたのに。 海へ行って日と共に暮れよう。 大いなる創作の海。 これが鏡を一枚隔てた 先にあるのが、 僕はなんとも哀しいのだ。 まだ、それでもね、まだ。 優しさを探してしまうの。 ただ昏い心だけで、 曲を編めたらいいのに。 振り向いた先に在る朝が、 僕の影を前に伸ばすから、 踏み出す足は独りでも、 此処にはもう戻らない。 「さよなら。」 なんて歌えるようになったんだ。 許してください。 花を、花を、海へ渡して、 この香りだけ連れてゆく。