「歯磨きした?」と声がする 宇宙船が通りすぎる音を 聞きながらぼくは 一億年後に気づいた 花の香り 月の光 でもちょっと遅かった 片足ステップ踏みながら 地平線に消えてゆくきみを 眺めてたぼくは 一億年前芽生えた 恋心に夏の陽射し まだちょっと残っている 海がまだ輝いて 花がまだ燃えて 人がまだ生きて 何か話して 煙がまだ揺れて 灯りがまだついて きみがまだそこで歯を磨いて 一億年後に届いた 声の響き きみのうがい でもちょっと遅かった それじゃダメだ ぼくは起き上がり答えた 一億年後から戻って 忘れてただけさ いまいくよ