愛しい鳴き声に起こされた 夏のおわりの日 寝ぼけたまま目をこすりながら ふらり海へ向かったのです ねえ リリィ 退屈な日々のなか ぼくらはよく頑張ったね 厚い雲さえ覆えないほど 笑い続けていたの この夏がおわりを告げたら ふたりは 忘れてしまうの広い 海にのみこまれるようにね さざ波が寄せては返すようにね かかとを踏みつぶして履いていた ぼろぼろのスニーカーも 砂にまみれきらりと光れば まるで魔法つかいの靴ね ねえ リリィ きみはよくお姫さまになりたかった なんて言ったね 特別じゃないきみのかわいさは とびきりなんだよ いつも この夏がおわりを告げたら ふたりは忘れてしまうの 青い空に身をまかせていたこと 気の向くまま風に吹かれていたこと 退屈な日々のなか ぼくらはずっと笑っていたね こんなふうに年をとれるなら もうなにもいらないのにね この夏にさよならをしたら ふたりは忘れてしまうの まためぐりあう季節のなかで言うよ この手をとってくれませんか マイディアリリィ