研ぎ澄まされて無駄のない 射線上の声がひとつ 満たされたような幸せは 断片的に続くのだ 息づく緑の畦道と 沈む太陽がキスをして 最後の熱を消化するように 夢中になって輝く蛍になる 数を重ねるたびに色を失う夏が 僕と君とをむしりとる 心に不備はない 雲を払うべく風が吹く 夕立過ぎ去る蝉時雨 終わることのない夏の日は 歳を取るだけ感じるのだ 汗ばむ君の手を握り締め 重ねた月日埋めるように 最後の光が映す横顔を眺めていた 夢を見ていた 止まらない 色付く限りない青さと 深く淡いこの時代が 大人に変わってしまう僕たちを 眺めていた 手招きした こっちにおいで 僕等この青空に食べられてしまった 飲み込まれれば落ちてゆく 雲ひとつない空 穴だらけの心をそれ以外が支配する 思うほどに尖っていく 帰りたくなったよ 溶けてしまった 透明のガラスのような心ひとつ 研ぎ澄まされて無駄のない 射線上の声がひとつ