いらっしゃいませ ドアの鈴が鳴る 今日も来てくれてありがとう 夕方の5時半 カウンター奥の席 柔らかくて深い革靴の足音 くたくたになった文庫本を開く 歌の中で歌うよ 難しい言葉は浮かばないけれど 歌の中で歌を歌うの あなたにありがとうと 人並外れた路地裏のつきあたり 看板もない店 少しぬるめのコーヒー 金縁のティーカップに ありったけを注ぐ 歌の中で歌を歌うよ 難しい歌は歌えないけれど 歌の中で歌を歌うの あなたにありがとうと 夢の中で夢を見たよ あなたがここから去る夢 いつかはきっと帰るでしょ? だってあなたは客人 歌の中で歌を歌うよ あなたには帰る場所があるから 歌の中で祈ってるよ どうか、またここで 見つけてくれてありがとう