波打ち際を走る 黒い犬が足を止め 風は吹くことを忘れ 言葉は薄れてゆく 抱えた膝の砂を 君は払おうともせず オレンジ色に輝く 波を見つめている ここで今この場所で 奇跡が始まるその時を ほんのわずかな狭間に見せる詩を 握り返すその手の 強さに少し驚いて ふと見ればその横顔は 涙で濡れている 重なり合うふたつの 季節が奏でるその調べに 今はただ何もかもが酔いしれてる ここで今この場所で 奇跡が始まるその時を ほんのわずかな狭間に見せる詩を 最後まで見届けて また吹きはじめた風は 今では頬に冷たく もう夏を捜せない 波打ち際を走る 黒い犬が足を止め 風は吹くことを忘れ 言葉は薄れてゆく オレンジ色の果てに