夏の幽霊に踊らされて 私、溶けてしまうから ただ、ただ なりふり構わずに連れ出して 『慰めならもう要らないわ』 ほどけた靴紐と空回った私 少し腫れ上がった話 ゆらゆら揺らいだ影法師と 歪んだレールの隙間から 呼び返す 夏の幽霊に踊らされて 私、溺れてしまうから ただ、ただ 蝉の号令に気を遣われ 私、泣き出してしまうから まだ、まだ 靴擦れしたまま走りだした 忘れないで 『ただ、まだ』って 言わせないで 夏の幽霊に気を取られて 踏み潰した蕾と 街の喧噪にくたびれては 睨み付けた有象無象 夏の幽霊のせいにして 飽きもせずに冬を焦がれて 遥か彼方 まだ見ぬ季節に憧れてしまう さようなら、幽霊 君のいない春を恨む