200円とカギだけあればいい 乱雑にポケットに入れてさ 歩くは雨上がりの道 コンクリートの匂い 適当に手に取った半袖のTシャツを 着て 思いのほか明るい空に身震いした 口元を隠すと感情は読めない でもそれは常識になってしまった 当たり前は人をゆがめてしまうから 一人で朝方を喫むのは 呼吸が自由にできるからさ 私の一挙手一投足を気にする人は 居ない 誰のためでもない人生を 誰のためでもない時間を送るために 今日もそこの自販機まで歩くのさ 規格外の感情はもう 乱雑にポケットに入れてた 歩くはひと気のない森 ケムシたちの匂い いやきっと ドクダミの匂いなんだろうと 今の今更気付いた 歳数を取ると感性は失われる そして常識を知るようだ 理由を知るようだ 構造を知るようだ 家を飛び出したあの朝方に似ていた 蚊に刺されを気に留めず車ひとつ 走らない道で 死んだように倒れた 吐くまで泣いた 常識を知りたくなかった 今日はそんな朝に似ている 今日はすごくそんな朝に似ている 一人で朝方を喫むのは 呼吸が自由にできるからさ 私の一挙手一投足を気にする人は 居ない 誰のためでもない人生を 誰のためでもない時間を送るために 今日もそこの自販機まで歩くのさ 釣り銭はドブの中 流れるように落ちていく 差し伸べた手は届かない 理不尽な世界 眺めながら呟く これが私の人生なんだ 間違っちゃいないさ
