渡すは褻 解けた手から 起こした軽凪 陽炎に揺れる先は 花畑か ぱちぱちぱちと光る街は 「遠すぎるね」 何が言いたいのさ 飛び越えた石段に 落ちた汗は ゆらゆらゆらと浮かび 雲に吸い込まれて そこにはもう誰もいない 無口は常盤が 手を振るだけ かける影 解けた手から こぼした縁に 焦る過程 薄めく影が 落としている 片割れ 土礫のにおいが 鼻に染みて 西日の矢 石の鈍色には 誰も見ない 浦々の縉紳荘 眠らずに じっとしている 割れる畦 薄暗がりに 木々の連なり 明け穿て 目を開くとき 「城」が 見えてくる 振り向かず たどりつけたら そこが夕暮れ 足跡は 消して来たから ここにいる 僕だけ