僕は人を殺した 死んでも殺してやりたかった だって彼奴は僕を殺した 傷も滴る血も眼には見えないけど 握り締めた血塗れのナイフを 何度も彼奴の胸に突き立てた 宛先の無い怒りも込めた もう今更何も変わらないから 聖者の群れから逃げる途中で 何処に行けば良いのかも忘れた 仕方ないだろ誰だって 誰だってそうしたはずだろ 偽善掲げるな嘘だって分かってるよ ただ居場所を守りたくて 縋る思いで伸ばした指先を 匿名の誰かが嘲笑って 圧し折っただけ それだけ 流れた夜のニュースでやってた 「血も涙も無い人殺しが 居ました。」 画面の向こうできっと誰かが 「世も末だ。」なんて呟くだろう 今更思う正しかったのかと 何も元には戻らないけど 仕方ないだろ誰だって 誰だって失いたくない そんな顔するな嘘だって 分かってるよ 奪われたもの奪い返して 繰り返して人は生きてきたのに 何故僕だけが寂しくて 泣いてるんだろう あれは良くてこれは駄目で あやふやな正義が蔓延って 誰もがいつも被害者面で 失くしたふりで笑ってる こんなに複雑な世界の 雑なルールを決めたのは誰? 上手いやり方があるのなら 笑ってないで教えて欲しかった 目を覚まして身体を起こして 何気なくテレビを点ける 昨夜も何処かで誰かが死んだと 画面に光る哀し気な顔 馬鹿な奴が居るもんだと嘲笑って いつも通りに顔を洗って 砕けた心を拾い集めて 嘘をつく為に今日も出掛ける