一つだけ 空いた隣に 薄いコートを ふたつに折って 浮ついた 僅かな熱を 蓋する様に 灯りが落ちる 眩さに目を伏せる度に 少しずつ滲んだ この世界が もう一つあるみたいで 誰かに叫んだ姿は 今は重ねられなくて 足元 光を翳した 姿だけを追いかけた 振り返る痛みも 消えない痕も このまま夜の陰に一人 溶ける いつまでも 変わらないまま 過ごす日々には 留まれなくて 無意識に 心の奥で 触れる痛みが 瘡蓋になる 呟いた 言葉に含んだ ささやかな否定と 形作る 見せかけだけの 笑顔に さよなら 云えば本当に 終わる様な綻びが 何度も 浮かんでは消えて いつも 飲み込んでしまう まだ自分が選ぶ 弱さを抱え 少しだけこのままで時間(とき)を 止めて 誰かが 叫んだ姿は 今も重ねられなくて 明日を 照らした光は 誰にとっても同じ 振り返る痛みも 消えない痕も このまま夜の陰に一人 溶ける