飾れ 窓辺に ケトルの蘭 凍ったものならすべて白 ボタン 象牙 シナモン 殻のなか プリズム蝕む斜面はとぎれ 影踏みしながら追いかけて 砂糖とバターに溶けこんで 裸足のままで 目が醒めるとき 見たかったのは正しいもの 欲しかったのは静かな景色 結ぶとしたら高架線で 敷き詰めるならシャンパンの泡を 見わたす限りテントはふるえて 肌かぐわしく カクレクマノミ 輪をえがく 完璧な公転周期 ちいさな声の一匹が 濡れてかたまるバルコニー 近道だからと立ち寄る巡礼 もっと 灰色 みたされるでしょう 切なさをつらぬくエレジー かたちなき理想 偶像そびえる 現実は今誰を救うの? いつか見た花火のように 夜に 咲いて散ったレプリカ エピローグ 福音 コラージュした壁のなかに かけがえのない 隠花植物 還るとしたら変声期へ 叫びつづけるのは けがれた小指へ 破壊しようとする 双子のトルソー マンタのつめたい血をひく 銀貨 一枚 嚙みくだき 遠い汽笛に あこがれ あきらめ 星がひたいにある子供たち イントレランス 落下傘 見あげればいつも頭上に 羊飼いの夢 はずかしがってピアノの下 身をひそめている ありふれたノスタルジアのように 戻れない 消えるアナグラム 迷子たちは行く まだ見ぬ光は 切り裂かれたモンタージュ 飛べ いつか見たカモメのように 二人 灰になるその日まで ささやく枯葉の一枚は 膝をかかえて アトリエで ひとときやすらぎ 思う権利なく いまも黒点 飛びたつのでしょう 眠れない ハート ホームシック 消灯時刻はもう 過ぎさって 一人きりの怖い夢の中へ 重なるシャドウ 溶けるように 乾いたグラス 曇らせてゆく 逆巻く蜃気楼 永遠に覚めない白昼夢 エトワール いくつかの終末 幕があがる 悪い予感のするほうへ 慈愛訪ねてプラタナス 暗いトレモロ鳴るほうへ まどろみに初期化 身をゆだね あどけないほどモノクロで 横断歩道の牢獄の中 そこで 受精 そこで 胚胎 赤い表紙のプログラム あふれ こぼれ 幕があがる