毎年 おなじ蝉時雨 鳴いているのは ちがう蝉 そいつはさぞかし悔しかろう 鳴く蝉 一匹くらいなら 泣く蝉 まぎれてもいよう そいつはさぞかし優しかろう 空蝉よ 潰れてしまえ お前たち つきぬけて空高らかに歌え あゝ 大人になったお前は いま何に鳴いている 在りし日のお前に その面 見せてみろ 暑くて開けた窓 揺れているのは この心か うだる夏 地べたの先で 裳脱け腑抜けが 果てている どうしてそいつを笑うものか 現身よ 六日で出来た世界なぞ 七日も保てば 大往生 ごらん、 ── なあ? 焔をくすぶらせ 死に損ねた子は いまや その器 持て余し いったい何に命賭す 灰見つめど 鳳は飛ばぬ その伽藍に 陽を投ぜ 泣け 叫べ 蝉の子ら 命短し 往ぬまで歌え やかましいお前の歌が 聞けぬ夏など さみしかろう
