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超ベリーバッド

Track by狐火

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  • 2023.09.22
  • 4:24
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歌詞

1990年代、半ば過ぎの話 ここは祖父母の営む田舎町の小さな 商店 巷で流行っていたのは 「超ベリー・バッド(very bad)」 を略した チョベリバという言葉 何のことなのかよく分からない ここじゃ一生関わることない言葉 「最近の若者は~」なんて常套句 使いこなし頭抱える祖父 あぁ、 こういう時にチョベリバという 言葉使うのかと納得 この田舎町でもチョベリバという 言葉が 辞書の「た行」に追加され始め 学校の休憩時間に 皆がチョベリバという言葉で 会話する そもそも 「超ベリー・バッド(very bad)」 という超長い言葉を再度短く 略したわけだが 「最悪」と言った方が 全然意味も文字数も語呂も スムーズなわけで でも、 2022年もデジタルをあえて アナログで 表現する事が クールだったりするから 「超ベリー・グッド(very good)」 だと思う そんなある日、 店に来た アイスクリームの業者さんが 今、東京で流行っている商品を 持って来たと 祖父を何やら説得していた その商品名は 「チョベリバー」 チョコとストロベリーが層をなす バータイプのアイスクリーム 開いた口の塞がらない祖父の口に 「チョベリバー」 これが時代の最先端なのかと 田舎町の売上の上がらないこの 商店が ここから再起をかけるには この「チョベリバー」 に賭けるしかないかと 翌日から飛ぶように売れた あっという間に在庫が無くなり 追加で大量発注 チョベリバドリーム 夕食の会話にもチョベリバが混ざり 始めた 店に2台あったアイスクリーム 用の冷凍庫が チョベリバーで埋まって行き やがて冷凍食品用の冷凍庫も チョベリバーで埋まって行き ここはもはや田舎町のチョベリバー 専門店 今の自分があの日にタイムスリップ 出来たら 写真撮ってSNSで超バズらせたのに でも、 そんな事しなくて売れ行きは良好 でも、大切な事を忘れていた 日本には四季がある アイスクリームの一番売れる 夏の後には ゆっくりと冬が訪れる しかもここは 南国でもない極寒の東北 凍り付いた祖父の表情と 凍り付いたチョベリバーの包装紙 季節を忘れるほど夢中になれる 事があるって素晴らしいと思う そして、 冬は永遠に続くことはないまた春が 来る 冷凍庫の中で静かに雪解けを待つ チョベリバーを 同じ様に雪解けを待つフキノトウと 重ね合わせ また来るはずの流行に心躍らせ 今日から毛布を1枚多くかける しかし、 流行というのは驚くほど流れが速く 春先にはあのチョベリバが 死語として扱われる様になった 言葉も死ぬという事を初めて知った 在庫のチョベリバーをかじりながら 祖父は考えた もしかして、 いつの時代も流行を持って来るのは 女子高生で その女子高生達がこの春に流行を 置いて高校を卒業したのか だとしたら、流行の賞味期限は 【春から秋】 秋までに流行は食べ 尽くしてください 好きで始めた事を好きなまま 続けて行けたら 好きな言葉を好きなまま 使い続けて行けたら その過程は全て矛盾つらぬく 盾となりそして矛となる 真冬のアイスクリームは 流行り去っても溶けを知らず 超ベリーバッドも何周回って クラシカルでプラチナム あの時代を呼び起こす引き金となる 流行り言葉も アイスクリームまで行けたら勝ちだ ただ「超ベリー・ バッド(very bad)」って 食べ物の名前としたら超最悪だね 人と同じように言葉も 本当に忘れ 去られた時に死語になると思う だけど、あの時代、 この言葉を大勢の人が使い 心躍り、そして駆け抜けた事は 閉店の日まで冷凍庫の底に残った チョベリバーが知ってる

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