愛は手探りで さがすものだから 私は歩こう 春の光の中を 白い春の中に 何かを見ようとして はてもせぬ霞の海に 私はこぎ出そう たとえかいを握るその手が 後悔の白跡を残そうと あの空めがけ 両手をのばし 私は 何かを つかもう 握りしめた その手の中が 悲しみで満されようと 愛はいつの日も 寂しさの微笑を 横顔にたたえ 後ろ姿だけを 私に残すものだから 白い花の群れる野原の中で じっとしゃがんでいよう あなたの声が 優しく私を呼びとめるまで ああ、そして あまりに白っぽい 夕陽の春の日に 小さな花を 胸に摘んで あなたにささげよう 愛はいつの日か 忘れ去られるものだから 野辺に寝ころんで 芳香に満てる あの春の空に あなたの顔を描こう あなたは光のような少女 まどろんだ春の空に ロンドを踊る―― 愛はさよならを 私に告げるだろう 草笛を吹いて 小川のほとりにすわろう みなもにゆらぐ 私の顔を じっといつまでも すわってながめていよう ばら色の雲が 目の前を流れてゆく その時にはじめて私は涙を流すのだ 西の空に 宵の明星が 輝きはじめて 私はきっと知るだろう 私たちの愛が 野中の小径を 寂寥となって ひっそりと 通り過ぎてゆくのを そしてそれが愛というには あまりに つつましやかであったことを あなたはヴィーナスのような少女 美しい春の夜空に 金色をちりばめてゆく―― 愛はもう今はない 夜明けの 花に宿る はかない 露のように 新しい朝日が まぶしすぎて もう見えはしない 遠く長い 春の夢から 目覚めた小鳥のように あなたは木々の 枝を離れ 遠い世界へ今旅立つ あなたは妖精のような少女 さわやかな春の空に 幸せを抱いて飛び去ってゆく――