人里離れた地に安寧を求め 隠れるように生きていた二人 Ah… 忙しげに 研究を続ける隠者 ひたすら苦しげに 眠ることも惜しむほどに Ah… その主人に 仕えるは魔法仕掛けの 少女の形した 精巧なる人形 魂持たぬツクリモノ けれどそんな扱いを受けることなく 娘のように愛され 少女人形は主を支えていた ふたりともに向かい合って過ごす 瞬間は多くないけど 食事の時間だけはたくさん話せた 一日の中特別なMemory 絵本を読み意味がわからず聞く 「愛とはなんですか?」 どんな疑問にさえも 丁寧に答えくれた主がはじめて 戸惑う―― その言葉の意味はそれぞれ 人により異なるという 「リズにとっての愛は?」 答えはわからずに…… 「次の休日には、 街に買い物にいこうね」 『主にそう告げられたリズ。 隠者が 以前に 休日をとったのはいつだっただろ う。 それは遠い昔のことのようにさえ 思えて。 それでも健気に、 その日が訪れるのを待ち 続けた――』 Ah… 「僕にとっての愛とは、 その人のために 何かを見返りなく 与えることなのだろう」 主は深い戸惑いを隠しきれず 懸命にそっと囁く 「たとえば、 それは君に命吹き込んだように」と 大きな手で撫でてもらうことは、 とても嬉しいけど その手に力はなく疲労を感じて 支えきれない無力を呪った なんのための研究かも知らない 無知で莫迦な私 どこかへ連れていって、 なんてこと言わない。 ただもう少し休んでくれたら―― 考え込む 背中――そこに 寄りかかるだけではなくて 少しでも頼ってもらえる 存在になろう…… ずっと根を詰めて 休むこともせずに没頭した報いか 力尽きて倒れる隠者の寝顔は、 解き放たれたように安らかに…… 『隠者の研究は、 このままでは長くは持たず、 動きを 止めてしまうかもしれない少女の ためのもので――。 彼女に眠りと死の違いはわからず、 ただ主が起きるのを待ち 続けていた……』 「こんなにゆっくりと 眠ってくださるのは久しぶり。 お仕事が一段落ついたのかしら? 次の休日には、 一緒に買い物にという約束。 その日も遠くないのかもしれない。 どんな服をきていこう。 わかった気がした。 私にとっての愛とは、 その日を待ち続けること。 ふたりで過ごす休日。 きっと、素敵な一日になる――」