バースデーカードを胸に貼った 子供が母親に駆け寄る 「ママ」 と呼ばれたその人は愛しそうに我が 子を抱き上げる 「誕生日おめでとう」 のパパの言葉に 満面の笑みを浮かべる子供 俺もその子に向かってほほ笑む 「誕生日おめでとう」 昔洗い物をしてる時 ヒビが入ってたグラスが割れ するどく手を切った とめどなく流れる血を止めながら 思ったことは 「俺ん時に割れてくれて良かった」 恋人に対する感情を振り返ると ほとんどが下に心がある 恋心であったように思う けどあの瞬間だけは 愛であったように思う けどほんまにあの瞬間ぐらいだ 「私には付き合ってる人がいます けど私が一緒にいることで その人を 大切にできないかもしれないので 今から別れを告げてきます」 そう届いたDM どこかで止めてほしいのだろうと 思い 無難な文章を返す 「どうかよく 話し合われてください」 そう返信した数日後 二通目が届く 「ありがとうございます さっき会って別れてきました」 その文章の最後にあった 「返信不要です」の文字は 今まで見たその中でも一番凛々しく あのメールは要望ではなく 決意だったのだ 自分の幸せ以上に 誰かの幸せを思い行動した 人の未来に 幸せが訪れないわけがない その決断により生まれた 命に向かってほほ笑む 「誕生日おめでとう その日付があるのは パパとママの他に もう一人の人がいたからなんだ」 運命ってやつは時に間の抜けた 顔をする もしかすると俺が 今の嫁さんに出会えたのは いつかの昼食でごはんを 大盛りにしたからってだけのことな のかもしれなく 生まれた時からそばにいる 優しいあなたを大好きな“偶然”が あなたがあの日にした選択も使い あなたを連れて行きたかった 未来へと連れて行く 一本道の先 春が待つ