18:00に予約していたスタジオ ちょうどに伺うと まだ前のバンドの人達が 片付けをしてて 5分程待機し もやもやした気持ちの中 練習を始める 無事にやりたかった曲も全て 歌い終え マイクをしまい 5分前に部屋を出る すると受付の時計が 19:00を指しており 中の時計が5分遅れていたことに 気が付いた 「さっきのバンドの人達は 18:00にスタジオを出ていたのだ」 この事実は 不思議なほどに胸を弾ませ 小銭を探す指先も踊る だがまた新たな問題が浮上する この時計のことを 店の人に伝えるかだ 誰かにそれを任せるのか 自分が口にするのかだ 「中の時計 5分遅れています」 勇気をふりしぼりそう言う 座席をゆずる時の感覚を思い出す 「あぁ あれ、すごく高い位置にあって…」 「あ、ですか ですか」 「あー でも ありがとうございます」 このやりとりには心当たりがある 干渉し合わん優しさってのもあり 言う方同様 言われる方も言われ慣れておらず 返しがちぐはぐになるのだ けど 伝えた言葉はそこで死なず 言った方 言われた方 ともにあとから考える そして時間を経て その言葉は 伝えたかった言葉として しっかり届く さほど練習する曲もないが 時計を見たいから 近々自転車を立ち漕ぎして スタジオに行こうと思う もちろんチェックする意味ではなく なんてゆーか その時計を見たら 世界も捨てたもんじゃないと 思えそうなのだ 新幹線で隣の座席に座る女性が 重そうなキャリーバッグを 自分の膝の前に置き 窮屈そうに身体をちぢめこんでいる 「いっそ棚を見上げてくれれば…」 足りない勇気がきっかけを求める 気付いたことがきっかけだ 優しさがもうすでに勇気だ