「25歳までにこれで食えんかったら キッパリ音楽の道はあきらめるから それまでこれで食えるかどうか 自分が納得いくとこまで 挑戦したい」 就活を断念し 両親を前に 思いの丈のありったけを打ち明ける しぶしぶ納得した両親 そこからはこれで 食えるようになるためにひたすら 精進 20歳 1st『三日月』 22歳 2nd『こころ』 23歳 3rd『栞』 24歳 4th『神門』 その時々でしっかりと 「これ以上ない」ってもんを出し 続けて来られたから 作品ごとにこだわる解像度は上がり 妥協せん方をとれる体力がついた 食えん状態で迎えた25歳 そこから約束を破り続けて10年 35歳 ようやく「これで食えてる」 と言える印税を 年間通して月々得ることが出来た 毎月届く デジタルの売上を知らせる 縦に細長い報告書は 10年以上前の曲が 2021年の今月もどこかで鳴り響いた 証拠だ フロアに 演者しかいない 夜ってのもたくさんあった いつかのピーズ 象ビル Beber ラッパーは皆 リリックに貪欲で やばい韻をとばせば その誕生を祝うようにして手が 上がった 遠足前日の子供みたく そんな手が上がるところをわくわく 想像しながら 韻を考える 夢を見る目を 細めた時に浮かぶそれは その時の机に向かう姿とよく 似ている 「すげえな ラジオで曲かかってんな」 「ありがとう あれ ほんま嬉しいねん」 けど すごいのは ラジオで曲をかけることが出来 人をこんなに喜ばせられる彼らだ 「あっち側にいけたら どんな景色が見れんかな?」 今なら少し分かる この世にラインに隔てられた 居場所はなく あるのは 自分が立つ現在地だけだ “韻を踏むのがマストか 否かの論争” 論よりノート 韻を踏んだパターン 踏んでないパターン 両方書き より刺さった方を採用するだけだ それが表現である以上 青さがあり 大事なんは自分が 今一番信じられているやり方で ちゃんとそれが青くなるまで 真っ赤になりきれるかだ 「そんなたくさん曲出したら 一曲の価値が 下がってまうんとちゃうん?」 出し方に左右されん より価値あるもんを生み 出せるようになりたいがための この速度やねん どの世界でも 突き抜けた時に 状況が今一つ飛び抜けんのは あれはな 神様が気まぐれにこの世界にかけた コンプのせいやねん どんな窮地でも鼻歌をうたい その時にしか 生まれないメロディに耳を傾ける 創作意欲が死なん限り どんな苦境も ノートの置かれた机の上 逆転劇ってのは 人生にでなく 目的と手段に対して起こりえる これで食いたくて これをやり込んでいたいつか 今はこれをやり込みたいから これで食っている